HACCP概要
HACCPとは、危害要因分析(Hazard Analysis)と重要管理点(Critical Control Point)の略で、食品を製造する際に工程上の危害を起こす要因(ハザード)を分析し、それを最も効率よく管理できる部分(CCP:必須管理点)を継続的に管理して安全を確保する衛生管理手法です。
食品の製造・加工工程で発生するおそれのある微生物等の危害をあらかじめ分析
製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかを管理
危害要因分析とは食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析(Hazard Analysis)し、必須管理点とは必須的に管理しなくてはならない重要管理点(Critical Control Point)です。即ちHACCPとは食品の安全を確保するための衛生管理の手法です。
HACCPは全世界的に最も効果的で効率的な食品安全管理システムとして認められており、アメリカ、日本、欧州連合、国際機構(Codex、WHO、FAO)等でもすべての食品にHACCPを適用することを積極的に推奨しています。
HACCP構成要件
HACCPは食品を衛生的に生産できる施設、設備すなわちGMPの条件下でSSOP(衛生標準作業手順)を遵守した時、効果的に作動します。なぜならHACCPシステムは基本的な衛生管理が効果的に実行されるのを前提条件で重点的に管理しなければならない点を把握し集中管理するシステムだからです。
GMPとSSOP(衛生標準作業手順)が先行しないことにはHACCPシステムが効率的に稼働できないため、GMPとSSOP(衛生標準作業手順)はHACCP適用のための先行要件プログラムということになります。
先行要件プログラム(GMP、SSOP)の条件を充足できない工場の場合、科学的・技術的に複雑な安全性関連事項を取り扱うHACCP管理計画が遂行し難くなります。適切な先行要件を運営できなくなれば危害要素分析が困難になり、必須管理点をもっと多くまたは少なく設定することになる恐れがあります。
HACCP Plan(HACCP管理計画)
全生産工程において危害要因分析、臨界管理点の確認、臨界限界による各管理点に対する予防手段の確立、モニタリング手順の確立、システムが適切に働くまでを証明する手順の確立、システムを立証する記録の整備
SSOP(衛生標準作業手順)
使用水の衛生管理、機械器具の洗浄殺菌、交差汚染の防止、手指の消毒・殺菌、従業者の健康管理、有害・有毒物質・金属異物など異物混入、飛沫・ドリップなどによる食品への汚染防止、トイレの清潔維持、そ族・昆虫の駆除など
GMP(優良製造基準)
一定した品質の製品を生産するためのガイドラインであり管理の目的や目標を示したもので、それを実現するための方法は各工場に任されている
HACCP適用の手続き
食品製造・加工業者および集団給食施設でHACCPの適用推進時の手続きは次のとおりです。
HACCP推進チームの構成および役割分担
1.HACCPチームの編成
・HACCPシステムの確立と運用を主導するチームを編成
・品質管理、生産、総務、研究開発など多様な分野の職員で構成
・チーム長および各チームに具体的な役割を分担
2.衛生管理体制の整備
・現場の衛生点検および施設・設備の改善
・食品の衛生的な生産・調理に必要な施設・設備の現状確認
・GMPおよびSSOP構築・運営に必要な問題点の改善
3.前提条件プログラムの策定と実施
・施設・設備、衛生管理、保管・運送、検査、回収プログラムなどの基準作成
・現場での実施後、問題点を把握し基準を改定
4.製品および工程の文書化
・製品成分、規格、賞味期限、用途などを含む製品説明書の作成
・製造工程図、作業場平面図、設備系統図、用水・排水系統図の作成
・これらの資料を危害分析の基礎資料として活用
5.HACCPプランの策定
・原材料・工程ごとの危害要因分析の実施
・重要管理点(CCP)、管理基準、モニタリング方法、改善措置の設定
6.HACCP管理基準の文書化
・チーム構成、製品説明、工程図、危害分析
・CCPの設定、管理基準、モニタリング方法
・改善措置、検証、教育訓練、記録管理の手順
7.教育訓練および試験運用
・従業員、管理者、チームメンバーへの教育実施
・策定したHACCPプランの現場での試験運用
・有効性評価の実施
8.HACCPシステムの本格運用
・評価結果に基づく改善の実施
・システムの本格運用開始
・1か月間の運用実績を添えて、食品医薬品安全庁にHACCP認証を申請
HACCP 7原則12手続き(手続きの原則)
農場HACCP総合情報
安全な畜産物生産のための衛生管理システム
農場HACCPとは
農場HACCPは、畜産農場における衛生管理を向上させるための認証制度です。以下の特徴があります:
- 危害要因分析に基づく衛生管理システム
- 継続的な記録と確認による管理の見える化
- 生産工程の各段階における重要管理点の設定
- 科学的根拠に基づいた衛生管理の実施
取得するメリットとデメリット
メリット
- 生産物の安全性向上
- 取引先からの信頼性向上
- 経営の効率化
- 従業員の衛生意識向上
- ブランド価値の向上
デメリット
- 導入時の費用負担
- 記録管理の手間増加
- 従業員教育の必要性
- 定期的な更新審査の対応
適用品目リスト
と殺業
牛、豚、鳥
食肉加工業
ハム、ソーセージ類、ヤンニョム肉類、粉砕加工肉製品
油加工業
牛乳(低脂肪乳)、発酵乳類、チーズ類、加工乳、バター 類、アイスクリーム類
食肉個包処理業
カット個包肉
配合飼料工場
肉牛、乳牛、豚、鶏、魚類、その他
認証基準
基本要件
- 一般的衛生管理プログラムの整備
- HACCPプラン作成と実施
- 記録の保管と検証
具体的な要求事項
- 衛生管理体制の確立
- 重要管理点の設定と管理基準の設定
- モニタリング方法の確立
- 改善措置の設定
導入効果
経営面での効果
- 生産性の向上
- 事故率の低下
- 取引先の拡大
- 経営の効率化
衛生管理面での効果
- 食品安全性の向上
- 従業員の意識改革
- 農場の清浄性維持
- 疾病発生リスクの低減
国際HACCP総合情報
国際基準に基づく食品安全管理システム
国際HACCPとは
国際HACCPは、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)によって策定された国際的な食品安全管理システムです:
- Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析重要管理点)の略称
- 国際的に認められた科学的な食品安全管理手法
- 製造工程全般における危害の予防的管理
- グローバルな食品取引における基準として採用
取得するメリットとデメリット
メリット
- 国際市場への参入機会の拡大
- グローバルな取引先からの信頼獲得
- 製品の安全性に関する国際的な保証
- 品質管理コストの最適化
- 食品安全に関する国際競争力の向上
デメリット
- 導入・維持コストの増加
- 国際基準に対応する人材育成の必要性
- 詳細な文書化と記録管理の負担
- 定期的な国際監査への対応
適用品目リスト
一次生産品
農産物、畜産物、水産物、酪農製品
加工食品
缶詰、冷凍食品、レトルト食品、乳製品、肉製品、水産加工品
飲料
清涼飲料水、アルコール飲料、ミネラルウォーター
食品原料
添加物、香料、調味料、食品素材
包装材料
食品包装材、容器、梱包資材
認証基準
7原則
- 危害分析の実施
- 重要管理点(CCP)の決定
- 管理基準の設定
- モニタリング方法の確立
- 改善措置の設定
- 検証方法の確立
- 文書化と記録の維持
12手順
- HACCPチームの編成
- 製品の明確な記述
- 意図する用途の特定
- 製造工程図の作成
- 現場での工程図の確認
- 7原則の適用
導入効果
ビジネス面での効果
- 国際市場での競争力強化
- 取引可能な市場の拡大
- 製品回収リスクの低減
- ブランド価値の向上
管理面での効果
- 国際的な食品安全基準への適合
- 体系的な品質管理の実現
- 従業員の安全意識の向上
- トレーサビリティの強化